Global Brain Singaporeはトークセッション「東南アジアにおけるEコマースの未来」を2016年6月14日にスタートアップ市場が盛り上がるシンガポールにて開催しました。

 

人口が多く、成長が続くアジアは、世界中から市場開拓として注目される市場です。グローバル・ブレインでは2015年よりGlobal Brain Singaporeを立ち上げ、日本のベンチャー企業のアジア進出から、アジアのベンチャー企業のソーシングやアジアのベンチャー企業の日本進出の支援を行っています。またGlobal Brain Singaporeではアジア各国のアクセラレーター、ベンチャー企業、教育機関、政府機関、大手企業の方のネットワークを構築し、アジア全体のベンチャー企業育成のエコシステムの発展に向けて活動しています。

その構築したネットワークを活かし、今回アジアの大企業やベンチャー企業、投資家や日本企業の方々を、日本企業の方を招いた、プライベートイベントを開催いたしました。アジア最大のスタートアップイベントである「Echelon Asia Summit 2016」の前日に開催されたこともあり、プライベートイベントにもかかわらず、予定数を大幅に超える多数の人たちにお集まりいただきました。

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イベント冒頭にグローバル・ブレイン シンガポールの代表鈴木 尚より当社の説明や、昨今大きな動きを見せるEコマース市場について紹介させて頂きました。

その後、東南アジア最大級のEコマースサイト「Lazada」のシンガポール法人のCOOを務めるArthur Brejon氏と、シンガポール拠点のフリマアプリで目下海外展開を加速する「Carousell」のバイス・プレジデントを務めるJJ Chai氏を招いたトークセッションを行いました。

東南アジアにおけるEコマース市場のマーケットリーダーであるお二人に、各ビジネスを通して見えてきたアジアでの市場開拓の課題や、ユーザーからの信頼を獲得する秘訣について語っていただきました。

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「顧客の声を聞くことがもっともタフであり、大切な仕事」Arthur Brejon氏(Lazada)

「東南アジア版Amazon」とも呼ばれるLazadaのCOO、Arthur Brejon氏。同社は、2012年にドイツのロケット・インターネット社によって設立。家電製品や衣類など幅広い商品を取り扱う総合系のEコマースサイトを運営しています。

インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、シンガポールの6カ国でサービスを展開し、今年4月には、中国のアリババ・グループによって買収されたことで日本のIT業界でも話題になりました。

セッションではまず、Lazadaの4年間の軌跡を紹介。順調にサービスを拡大できた理由の一つは、常に新しいことに挑戦しようとする企業文化にあると述べました。中でも焦点を合わせるべきは、東南アジアで抱える約800万人の顧客のリテンションを高めること、そのためには、顧客体験を改善し続けることが重要だと言います。「顧客の声を聞き続けることがEコマース事業社にとってもっともタフであり、もっとも大切。顧客からのフィードバックを集めたり、サイト内のユーザーの行動分析に膨大な時間を費やしています」(Arthur氏)

同社は先日、モバイル版アプリをリニューアル。ここでもユーザーに関するデータを踏まえて改良を継続。そうした結果がロイヤルティーの高い顧客の獲得につながり、1日500万人がサイトを訪れる今の状況が築かれているのだそうです。

一方で、東南アジアのEコマース市場の課題については、次のように見ています。

「決済システムや物流など、Eコマースのインフラが整備されていないことが問題。例えば、オンライン決済への不信感などから代金引換を好む人が多く、特にその場合はキャンセルの確率も高くなる」(Arthur氏)

同社としては、代金引換ではなくオンラインで完結する決済の仕組みをよりシンプルに、かつスムーズにできるよう開発を進めると同時に、セキュリティーや機能の透明性も高める考えだそうです。

さらには、物流面への投資も継続する予定。同社はすでに、大手企業を含む75社以上との物流ネットワークを擁していますが、未だにトラブルが多いと言います。自社で改善を続けると同時に、「Eコマースに特化した物流系スタートアップが増えることも期待したい」(Arthur氏)とも語りました。

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 ユーザー間の透明性を高めることが、サービス拡大のカギーーCarousell

Carousell のバイス・プレジデント、JJ Chai氏。実は同氏、バケーションレンタルサービス「Airbnb」の東南アジア地域を統括し、グローバルのバイス・プレジデントも務めていた人物です。今年3月にCarousell に参画した際には、東南アジアのIT業界で話題になりました。

そんなJJ氏は、Carousell では海外展開を担っています。Carousell は2012年にシンガポールで開始された、CtoCのフリマサービス。モバイルに特化し、中古品やハンドメイドのものなど商品をスマホで撮影し投稿するだけで売り買いできる手軽さから、若者の支持を集めています。現在、シンガポール、台湾、インドネシア、マレーシア、香港でサービスを展開中です。

同氏はCarousellの成長の要因の一つとして、Airbnbが空き部屋を扱うのと同じく、それまで個人が使っていなかったものに焦点を当てた、ユニークな事業アイデアを挙げました。

「人は誰しも不要なものを所有しており、それを使いはしないけど捨てられずに困っている。できればそれを手放して、もっと広い部屋で時間を過ごしたいとも思っている。Carousellは、そうした人の心理に寄り添ったサステナブルな事業モデルである」(JJ氏)

さらにもう一つの要因として挙げたのが、プラットフォームとしてのユーザーからの信頼を獲得できた点。

「商品の売り手と買い手がチャットで交流したり、ユーザー同士が評価し合える機能を設けていることが、信頼の獲得につながっている。こうしたコミュニティー機能は、顧客のリテンションを高めるのにも貢献している」(JJ氏)と言います。

これからもユーザーのアプリ内行動や滞在時間の推移を分析し、ユーザーエクスペリエンスを改良していく考え。さらに今後の重点課題は、東南アジアの新規市場へのサービス拡大、そして収益化に向けた広告枠の販売などであることを明かしてくれました。

Carousellは、まだマネタイズにはいたっていないそう。取引が多い人気のカテゴリー(家電製品やファッションアイテムなど)には、個人がリスティング広告を出稿できるようなメニューを導入することなどを検討中とのこと。

LazadaとCarousellが語ってくれた教訓、そして東南アジアの市場の課題は、日本企業がサービスを海外展開する際にはもちろんのこと、日本の市場においても活かせるものでした。Global Brain Singaporeは今後も、東南アジアのEコマース市場にも注視していきたいと思います。